2014年秋季低温工学・超電導学会 セッション報告

11月5日(水)
A会場 9:45-18:30

加速器(1) 1A-a01-04 座長 植田 浩史

本セッションは、経産省の高温超電導コイル基盤技術開発プロジェクトおよびJSTのSイノベで実施している加速器用マグネットに関する報告があった。
1A-a01:横山氏(三菱電機)らは、経産省の高温超電導コイル基盤技術開発プロジェクト「シンクロトロン型加速器用高温超電導可変磁場コイル」
の研究開発を子なっている。今回はプロジェクトの概要について報告した。シンクロトロンに高温超電導を適用する場合、交流損失や磁場の応答性
が問題となるが、励磁速度を従来の3 T/sから3 T/minに緩和することで解決を図り、多段エネルギー出射方式を考えているとのことであった。
1A-a02:高山氏(東芝)らはSイノベの一環で、FFAG加速器の高温超伝導化により重粒子線がん治療装置の小型・高効率・高性能化を目指している。
今回は、巻線精度の実測および磁場均一度に与える影響の磁場解析結果を報告した。巻線精度は線材の表面粗さも含めは100 μm以下が要求されると
のことであった。鉄を利用しているが、鉄の有無や配置によって巻線精度が磁場分布にどこまで影響するのかという質問があった。
1A-a03:高山氏(東芝)らは経産省の高温超電導コイル基盤技術開発プロジェクト「粒子線ビーム経路部・照射部用コイル」で実施している回転
ガントリー用高温超電導電磁石の設計について報告した。最終的には200トン未満のガントリーの開発を目指している。従来の設計では、磁場均一度
(3 T、0.1%以下)が目標値を満たさないため、コイルエンドを延長することで均一度を改善した。しかしながら、3 Tの設計では200トン未満が達成
できそうもないでの、6 Tまで上げることを検討中とのことであった。
1A-a04:佐野氏(京大)らはSイノベで2極マグネットの多極磁場成分の測定結果を報告した。2極磁場成分と 6極磁場成分でドリフトの大きさが異なる
ことが明らかとなった。この現象についてコイル内電流の幾何学的な配置で説明をしていたが、磁場分布やIc-B特性に関係する詳細な検討が必要では
ないかと指摘があった。


回転機 1A-a05-08 座長 濱島 高太郎

本セッションでは,3件の風力発電機と1件のIPMモータに関するものであり、風力発電機のうちの最初の2件はNEDOの風力発電高度実用化研究事業
のなかの「10 MW超級風車の調査研究」に関するものであった。
1A-a05:向山(古河電工)から、次世代の風力発電では,洋上への拡大傾向が進んでおり、その単機容量の大型化が検討されている。10 MW超級
の発電機は重量が重くなるので、超電導の小型・軽量の特長が期待されてきている。ここでは、回転子のみに高温超電導を用いた界磁コイルと
鉄心で構成した比較的軽量な発電機の特性を電磁界解析ソフトで解析した結果、 10 MWを達成できることが分かった。
1A-a06:福井(新潟大)から、10 MW超級同期発電機の電気設計に関する報告があった。電気装荷や磁気装荷を現用機と同様に選定して設計した
結果、鉄心内および空隙の磁束密度をそれぞれ1.5 Tおよび1 Tとしたときに、力率0.95で10.4 MWの出力,同期リアクタンス0.367 Ωが得られた。
1A-a07:牧(東京海洋大)から、10 MW風力発電システムを対象に,増速機を1段とした場合と,ダイレクトドライブとした場合について、突極型
高温超電導界磁巻線、現用機の銅界磁巻線、永久磁石界磁機の3種類の発電機の最適な設計をして比較検討した。その結果,全ての種類の発電機の
重量も回転速度が速くなると、1/2~1乗に反比例することが分かった。また,同じ回転数の場合、超電導発電機の重量は最も少なく、PM発電機は
その約1.3倍、銅発電機はその約2倍となった。
1A-a08:岡(新潟大)から、「IPMモータ回転子に埋め込まれた永久磁石のHTSバルク磁石による新しい着磁方法」と題して、HTSバルクの応用事例
の報告があった。希土類永久磁石の磁場捕捉性能が向上するに伴い、従来型のパルス着磁では大型となる。モータ設計の自由度を上げるために、
HTSバルクを適用することを提案した。回転子に埋め込まれた4極、6極、8極の永久磁石をHTSバルクで着磁する実験を実施した結果、バルク配置を
最適化することにより必要な着磁性能が得られる可能性を示した。


NIコイル 1A-p01-05 座長 花井 哲

NIコイル(No-insulation coil)セッションでは、千葉大、理研グループから1件、早稲田大学、北海道大学、中部電力、KEK、MITグループから
3件、計4件の報告があった。
1A-p01:柳澤杏子(千葉大)らは、小規模NIコイルの実験結果で検証された回路モデルから算出された特性時定数と比較して実用レベルのNI
コイルの特性時定数が想定以上に大きく、実用レベルのNIコイルには課題があることを提起した。
1A-p03:池田愛花(早稲田大)らは、NIコイルとPI(Partial-insulation)コイルの励磁特性をPEEC(Partial Element Equivalent Circuit)
手法で解析することにより、PIコイルよりも全体の接触抵抗を大きくしたNIコイルの方が励磁遅れを軽減できることを示した。
1A-p04:大木隆広(早稲田大)らは、NIコイルとPIコイルの電源遮断時の電磁気的特性をPEEC手法で解析することにより、電源遮断時のコイル
の局所的な電気的な振る舞いを示した。
1A-p05:南克彦(早稲田大)らは、NIコイルに過電流通電したときの現象をPEEC手法による回路解析と熱解析を連成して評価し、実験結果と
良い一致をすることを示した。


NMR(1) 1A-p06-10 座長 横山 彰一

本セッションでは、NMRに関し5件の発表があった。
1A-p06:金(理研)らは、1 GHz以上の高磁場&高均一度NMR/MRI開発向けに機械式ロールカッターを用いたREBCO多芯テープ線材を試作し、臨界
電流特性(U-I特性)を損なうこと無くNMRで問題となっている磁化の改善を評価した。
1A-p07:松田(東工大)らは、p06の関連講演として、機械式ロールカッターによるREBCO多芯テープ線材の製作方法や超電導膜の切断状況など
を報告した。銅安定化材を損なうことなく超電導膜だけを切断できた。
1A-p08:金(理研)らは、NMR/MRIマグネットの永久電流モードを目指し、CJMB法によるGd123テープ線の超伝導接続を提案。熱サイクルを用いた
超電導膜表面露出と露出面間の熱処理拡散接合を実施し、良好な超電導接続を得たことを報告した。
1A-p09:金井(新潟大)らは、高温超伝導対向型バルク磁石を用いたNMRにおける磁場分布解析を行い、高温超伝導バルクの発生する磁場形状に
対し小型渦巻きコイルでの補正を検討した。
1A-p10:仲村(理研)らは、高分解能NMRおよびマイクロMRI用に磁界均一度を向上させるために中心部内径を大きくした高温超伝導バルク磁石に
対し室温シムコイルを用いてシム調整を実施した。


11月5日(水)
B会場 9:45-18:45

交流送電ケーブル 1B-a01-05 座長 筑本 知子

東北大、住友電工、鹿児島大学、早稲田大学から計4件の報告があった。
1B-a01:東北大の秋田らは、三相同軸型ケーブル(66 kV/2 kA、BSCCO一層)+コルゲート管(旭プロジェクトタイプ)について、電流平衡モデル
を用いて、ケーブル外径を変化させた時のケーブル内の発熱及び外部からの熱侵入の変化を解析した。解析結果より、長距離化のためには、導体
部の径を小さくして、侵入熱を低減化させると同時に、LN2の流路幅を確保し、LN2の圧力損失・摩擦損失を低減することが重要であると示唆した。
1B-a02:住友電工の森村らは、発電機引き出し用の大電流ケーブル(22 kV/12 kA)の設計を行い、その二相短絡電流通電試験(63 krms, 0.6 sec)
を行った結果について紹介し、通電時の温度上昇および電磁力(〜1300 kgf/m)によって劣化しないことが確認されたと述べた。
1B-a03:鹿児島大学の假重らは、三相同軸型ケーブルの交流損失評価についてポインティングベクトル法の採用を提案しているが、今回その妥当性
を検証するために、単相超電導電力ケーブルについて交流損失評価を行い、四端子法とよく一致する値が得られたことを報告した。
1B-a04:早稲田大学の安井らは、66 kV、1500 m級の三心一括型ケーブルをモデルに、31.5 kA-2 secの短絡電流が流れた時のケーブル内の温度上昇
およびLN2の温度・圧力解析を行った結果について報告し、同条件下ではLN2の温度が飽和温度に達するため、安全弁による放圧対策を行う必要がある
ことを指摘した。また短絡条件を1 sec以内であれば、安全に冷凍システムを運転できると述べた。
1B-a05:早稲田大学の佐藤らは、66 kV三心一括型ケーブルに31.5 kA-2 secの短絡電流が流れた時の温度上昇について、循環ポンプを考慮したポンプ
サーキュレーションモデルを加味し連成解析を行い、30 mケーブルを用いた実際の過電流通電試験の結果との比較を行った。その結果、モデルの妥当
性が確認された。


直流送電ケーブル 1B-a06-08 座長 王 旭東
1B-a06(中部大):石狩で実施されている直流送電実証プロジェクトの紹介および現状に関する報告がなされた。500 m長ケーブルの冷却では
2日強程度であり、冷却時のケーブルの熱収縮対策として熱サイクルによるケーブルのヘリカル変形を利用する。
1B-a07(九工大):Bi2223テープ線材を用いた直流超電導ケーブルの電流容量の改善に関する報告がなされた。発表では、ケーブル化における
超電導テープ線の巻き角度を調整し、テープ面に対して垂直磁界成分を減らして水平磁界成分とのバランスを変えることで、調整しないもの
よりもケーブルの電流容量を向上させることが可能である。また、ケーブルが多層化することでより有効となる。質疑では、低電界の損失に
よる影響や実用的な巻き角度に関する検討について議論がなされた。
1B-p08(鉄道総研):電気鉄道のき電線への応用として、超電導き電ケーブルシステムに関する開発状況の報告がなされた。現在は、30 mと
300 mの試験線を用いた対向流循環方式冷却試験や走行試験を行っており、300 mのケーブルに関しては50時間程度で冷却可能である。回生効率
について議論され、密な運行ダイヤにおいては超電導ケーブルのメリットがあるということであった。


磁気軸受 1B-p01-05 座長 中村 武恒

本セッションにおける5件の講演は、いずれもNEDOの助成事業「次世代フライホイール蓄電システムの開発」の一環として実施されたものである。
1B-p01:鉄道総研の長谷川らは、系統安定化用フライホイール蓄電装置の開発概要を講演した。フライホイールのメリットや課題が説明された後、
300 kW、100 kWh級実証機(定格回転数: 3000~6000 rpm、フライホイール質量: 3000 kg)の開発現状が報告された。平成27年度には、山梨県
米倉山に設置されているMW級太陽光発電装置と6.6 kV交流系統にて連携し、系統安定化実証試験が予定されているとのことであった。
1B-p02:鉄道総研の古川らは、フライホイール用超電導磁気軸受の設計結果を報告した。2次元軸対称の電磁界解析・構造解析モデルによって設計
検討したところ、ダブルパンケーキ型の超電導コイル7枚と超電導バルク体4枚の構成にて、10tのフライホイールを浮上可能である結果が示された。
このとき、浮上高さは20 mmであり、またコイルの最大経験磁場は5.7 Tであった。
1B-p03:古河電工の向山らは、超電導磁気軸受用のイットリウム系超電導コイルの通電試験結果を報告した。外径260 mmのダブルパンケーキコイル
を製作し、温度54 K(伝導冷却)において110 A以上の通電が可能なことを確認した。さらに、上記ダブルパンケーキコイルを5組準備し、超電導バルク
体と組み合わせることで、浮上力実験を実施した。運転温度30 K以下に冷却して実験したところ、ほぼ設計通りの40 kN (4.1 ton)の荷重を達成した。
なお、このときバルク体はほぼMeissner状態とのことで、理想的には安定浮上が可能とのことであった。
1B-p04:鉄道総研の荒井らは、フライホイール蓄電装置用の磁性流体真空シール(発電電動機とフライホイール(真空部)間のシールに使用))の
開発現状を報告した。本報告では、同シールの放熱性を改善して、直径100 mmの軸の真空封止状態にて、高速回転時(6000 rpm以上)時の長期耐久性
目途が得られている。
1B-p05:鉄道総研の山下らは、高熱伝導・複合回転シャフトの開発状況を報告した。本研究では、kW級の摩擦損失を効率的に大気放出して、温度上昇
を抑制するシャフト開発が行われており、直径120 mmの大口径3層(SUS630/銅/SUS403)の複合シャフトを試作した。試作シャフトの同心度(0.01 mm
以下)、耐真空性、剛性、機械的特性について報告され、開発の目途が得られている。


核融合(2) 1B-p06-11 座長 夏目 恭平

1B-p06 松井邦浩(原子力機構): ITERトロイダル磁場コイルの調達進捗と題しTFコイル第1号機用巻線の製作と熱処理、コイル構造物の製作に
関する講演が行われた。これまでに製作された巻線の導体長を測定したところ、± 0.006 %の高精度で導体長を管理出来ている。第1本目の巻線
に対して熱処理(650 ± 5℃, 100時間)が実施された。熱処理による導体の伸縮量は0.070 %になり、想定した0.06 ± 0.02 %の範囲内であった。
質疑応答では、製作精度及び熱処理の伸び代の管理方法として導体長を用いていることなどが確認された。
1B-p07 梶谷秀樹(原子力機構): TFコイル巻線の実規模試作の進捗について原子力機構の松井邦浩氏が代理発表を行い、TFコイル製作第2
ラインの巻線システムの技術検証及び熱処理炉について報告された。開発された巻線システムでは、± 0.005 %の範囲で導体長の管理を行う。
現在は、実規模コイル巻線試作(ダミーDP)を巻線している。質疑応答では、製作ラインによって異なる雰囲気(真空もしくはアルゴン)で
熱処理されると回答があった。また、導体長測定の際の室内温度について、20 ± 1℃で管理されていることが確認された。
1B-p08 髙野克敏(原子力機構):ITER・TFコイル・ラジアル・プレートの製作に関する進捗について原子力機構の安藤真次氏が代理で発表を行い、
ラジアルプレート(RP)の実規模試作の結果及び実機製作の進捗状況について報告された。実規模RP試作では、高精度な平面度及び周長調整が可能
であることを実証した。現在、実機RPの製作を進めている。質疑応答では、測定に際してレーザトラッカのリフレクタを置く冶具を専用に製作する
などの工夫があると回答された。
1B-p09 安藤真次(原子力機構): ITER TF コイルのラジアル・プレート(RP)とカバー・プレート(CP)との溶接における溶接条件選定試験、
実規模試作の試験結果及びダミーダブルパンケーキ(ダミーDP)の進捗について報告された。RP-CP間の溶接条件が確立され、実規模試作試験が
行われた。RP-CP間を部分的に溶接した後に、裏返し反対側を溶接することを繰り返すことによって変形を抑え、ギャップ量及び平面度について
要求を達成した。質疑応答では、分割されたCP同士の溶接を行うかどうかについては協議中であること、溶接熱による絶縁物の破壊はないこと
などについて説明がなされた。
1B-p10 諏訪友音(原子力機構): CS撚線をステンレス鋼管に引き込む際にツイストピッチが伸びる方向に回転することがこれまでわかっていた。
本研究ではダミー撚線を用いて引き込みを行い、ステンレス鋼管に開けられた観測用窓によってツイストピッチ分布や回転分布を連続的に調べ
られた。結果、導体引き込みの先端にかけてツイストピッチが伸びていることがわかった。また、観測された撚り線のねじれからツイストピッチ
を計算すると実測値と近い値になった。質疑応答では、セントラルスパイラルが伸びるとは考えづらいことから、撚線との間で擦れて素線に傷が
付くことによる超伝導特性の劣化の懸念が指摘された。
1B-p11 名原啓博(原子力機構): ITER中心ソレノイド用超伝導導体の量産化と導体性能と題し、前の講演に引き続き、導体製作過程における
5次撚りピッチの伸長に関する講演。伸長の有るサンプルと2種類の伸長の無いサンプルを用いて、実規模導体試験装置(SULTAN)で行った試験結果
が報告された。伸長の有るサンプルのうちの1つは、繰り返し通電に対して分流開始温度が僅かに低下したが、ITERの要求性能は満たしている。
また、交流損失にはサンプル間の差異はなく、4次撚線にあるステンレスシート被覆が交流損失の増加を抑制しているのではないかと考えられる。
質疑応答では、ピッチ伸長によるボイド率変化の影響が示唆されたが、この程度のピッチ伸長ではほとんど影響は無いのではないかとのことであった。


11月5日(水)
C会場 9:45-18:45

MgB2バルク作製・着磁 1C-a01-04 座長 横山 和哉

1C-a01:杉野(東大)らはボールミルにより粒径を制御したMgB2バルク体を製作し、高磁場下でピンニング力を向上させ、7 KでのFC着磁において
試料表面で3.7 T、中心部で5 Tの捕捉磁場を達成した。
1C-a02:吉田(岩手大)らはTiドープ量を0~50%,焼結温度を700~900℃に変化させてHIP法で作製した試料において微細組織観察を行うとともに
捕捉磁場特性を評価し、Tiドープ量10%の時16.8 Kで3 Tを達成し、Jc特性に熱処理温度は影響しないことを明らかにした。一方、熱処理条件で微細
組織が異なることを明らかにした。
1C-a03:遠藤(岩手大)らは装置が小型かつ短時間で試料製作可能なSPS法において、自動乳鉢での混合時間を変えて,粒度分布やJc-B特性等を評価
した。60-120分の混合でMgOがピンとなり、HIP法と同程度の特性が得られることを明らかにした。
1C-a04:望月(岩手大)らはMg-RLI法で製作したMgB2バルク体をパルス着磁し、電流の流れが周方向に限定されるため試料1 mm上部でも均一な分布が
得られたことを報告した。また、発熱も抑制されてフラックスジャンプも発生せず、今後の更なる研究が期待される。


Y系ピンニング 1C-a05-08 座長 飯島 康裕

1C-a05: 吉田(名古屋大)らは、同グループによって開発されたLTG法による人工ピン制御方法について判りやすくレビュー報告した。同法によって製造された
SmBCO膜について、BaHfO3ナノロッドの太さや密度をコントロールすることでマッチング磁場が増大し、高Jc端が高磁場側へシフ トしていく様子を明瞭に示す
とともに、ロッド周辺部に発生する特徴的な歪を高分解能電顕にて観察しており、今後ナノロッドによるピン機構の本質に迫る知見が得られることが期待される。
1C-a06: 浅野(名古屋大)らは、IBAD基板上にPLD法でGdBCO膜にBaHfO3ナノロッドを導入して成膜する際、基板に小さな曲げ歪がかかった状態では導入される
ナノロッドの密度が高くなり、高Jc端が高磁場へシフトすることを見出した。歪んだ中間層表面上におけるBaHfO3結晶子の自由エネルギー変化が本効果の要因
と考えられ、金属テープ上におけるナノロッドピン導入における隠れたパラメータとして留意が必要である。
1C-a07: 石川(名古屋大)らは、ハイブリッド型人工ピンとして、BaHfO3ナノ ロッドとnmオーダーのBaHfO3層を組み合わせた構造を作製し、ab面方向、c
方向、双方に相関するピンの独立な制御を試みた。BaHfO3層の間隔が30 nmとした場合、c軸相関ピンの効果が失われる現象が見られ、結晶構造に由来するintrinsic
ピンとのアナロジーが議論された。
1C-a08: 渡邊(名古屋大)らは、成膜初期の温度プロファイルをパラメータとしてLTG法にてSmBCO薄膜を成長させる際に生じるナノロッドの太さや密度の変遷が
結晶成長論的に考証可能なことを示した。
以上、本セッションでは近年急速に進展するREBCO膜のナノロッド人工ピンにおいて、その効果が定量的に把握されるとともに、これを制御し得るパラメーターに
ついても結晶成長論的理解が進みつつあることが示された。


Y系線材 1C-p01-05 座長 山田 穣

本セッションではY系線材とそのNMR応用(接続、細線化など)について議論した。
1C-p01 安永ら(古河電工ほか):RE 系高温超電導線材を用いた高磁場コイル機器の開発が世界の各所で活発に進められている。このため、古河の子会社であるSuperPower
のMOCVD 法BZO ナノロッド線材の特性を詳しく調べ、機器の設計が容易なように、運用温度、磁場強度などに応じた線材の臨界電流を把握した。発表では、77 Kの自己磁場中、
4 K、30 Kの磁場中の臨界電流Icの相関が示され、コイル設計に寄与できるデータが提供できると思われた。また、BZOの導入で磁場依存性も改善している。具体的な特性は、
77 K,自己磁場で100-150 A/4 mm幅の特性の線は、30 K, 2 T および4 K, 17 Tで、それぞれ300-450 A/4mm幅、150-200 A/4 mm幅を示していた。
1C-p02 町ら(超電導工学研究所,産業用超電導線材・機器技術研究組合):NMR応用のY系コイルの研究から、実用化にたいして遮蔽電流が問題となっている。それを減らす
ための細線化を同グループでは行っている。元が245 Aの線材を10分割し、各フィラメント総計のIcで180 Aを得ている。溝幅のロスを除くと、Icの劣化は10%程度とのことで
ある。また、磁化緩和をSQUID磁束計で測定したところ、緩和時間が大幅に減少し104秒(約3時間)になったと発表した。分割していない線では、緩和速度は104秒たっても
30%程度しか減衰せず、零になるのはこの数十倍(コイルの研究では年のオーダー)と思われる。ただし、質疑応答では、この磁化測定では5 mm角程度の試料なので、磁場が
抜け出る箇所も多くなり、コイルなどでの磁化緩和と形状の違いなどをさらに検討する必要があるのではと議論された。
1C-p03 岡井ら(兵庫県立大ほか)、1C-p04 一瀬ら(電中研ほか)、1C-p05 土井ら(京大):以上の3件は、低コストな新しい鉄系、銅系基板によるYBCO線材の作製を試み
ている。ハステロイに比べ大幅に材料費が下がる。1C-p03,4は鉄系基板の配向処理方法と微細組織(TEM)の研究である。圧延条件、熱処理条件を変えて検討して、十分とは
言えないが2軸配向を得ている。今後が期待される。1C-p05は、銅基板を用いて配向度4-5°を得ており、77 K自己磁場で10 A程度のIcを得ている。また、中間層にNb-STO層を
用いて層構造を簡素化することにも成功している。いずれも、線材も工業製品化すれば、その競争では、最後は材料費の問題になるので、大いに期待される研究と言える。


Y系バルク作製・着磁 1C-p06-11 座長 藤代 博之

本セッションでは、Y系バルク作製と着磁に関する6件の発表がなされた。
太田(東大: 1C-p06)はCaドープY系バルクのCa濃度分布と超電導特性について、キャリアドープの確認と電気的磁気的な異方性について報告した。
山木(東大: 1C-p07)は、20-60 Kの温度域でのJcの改善を目的に、低温固相反応原料を用いたGd添加Y123溶融凝固バルクの特性について報告した。
瀬戸山(東大: 1C-p08)は、バルク内のボイド低減を目的に平均粒径の異なるY123原料粉末に冷間等方圧加圧(CIP)を施したバルクを作製し、微細組織及び超電導特性
を評価した。その結果、微細な原料粉を用いたCIP処理でボイドは低減することが報告された。
下田(新潟大: 1C-p09) は、超電導バルクのパルス着磁において、事前に逆磁場を印加しその後正磁場を印加することで、捕捉磁場の向上する実験結果を報告した。
五十嵐(足利工大: 1C-p10) と戸ヶ崎(足利工大: 1C-p11)は、周辺部に複数の細孔をあけた超電導バルクに対するパルス着磁特性を評価し、冷却効果や細孔サイズと
着磁特性の関係について報告した。いずれの発表も今後の進展が楽しみである。


11月5日(水)
D会場 9:45-18:30

Bi系・鉄系線材 1D-a01-04 座長 一瀬 中

1D-a01 高強度type HT-XXの開発 菊池昌志(住友電工)
高いヤング率を持つ補強材と接合する際に圧縮歪みを付与しながら接合するPre-tension法を適用したType HT-XXについて報告された。Pre-Tension
を140 Nにしたテープで4.2Kの引っ張り強度が500 MPaを超えるテープの製造に成功している。さらに、Pre-Tensionを170 Nに増やすと引っ張り強度は
増加する。一方、Pre-Tensionを増やすと転移温度が低下する傾向が見られている。
1D-a02 Bi2223線材作製における低酸素分圧下一次焼成の効果 古木昌宏(東大)
酸素分圧:0.03 atmで焼成したBi2223テープ線材の2次焼成条件の最適化を目的として、1次焼成を同条件で焼成した後、ロール圧延し、低酸素分圧
(3 or 5%)、温度、焼成時間(1時間、24時間)の条件を変えて2次焼成を行った結果が報告された。磁化の温度依存性から2次焼成の短時間焼成
(1時間)でロールによるクラックの修復が見られた。また、低酸素分圧の方が転移がシャープで、低酸素分圧、24時間焼成の試料が磁化曲線から
見積った臨界電流が高くなった。
1D-a03 積層前駆体膜から作製したBi,Pb-2223超伝導薄膜の超伝導特性 松本明善(物材機構)
Bi2223の反応過程を調べるために、Bi2212とCaCuPbO多層膜を用いて熱処理における組織の変化および超伝導特性について報告された。前駆体多層膜
の組織観察をSTEMで行い、多層膜が作製できていることを確認した。多層膜を熱処理することにより、X線回折測定から Bi2223が生成していることを
確認し、電気抵抗の温度依存性では104.5 Kでゼロ抵抗が観測されいる。多層膜の層数を増やすことにより、Bi2223がより生成し易くなっている。
1D-a04 構造相変態PIT法により作製した鉄カルコゲナイド線材の超伝導特性評価(井澤宏輝)
KFeSe2パウダーと鉄シースによるPIT-KFe2S2テープの作製について報告された。鉄シースから鉄を供給することにより、KFeSe2をKFe2S2に相変態させる。
また、Seの一部をSに置換することにより臨界温度が高くなる。磁化のヒステリシス曲線から見積った臨界電流密度は4.2 Kで160 A/cm2であったが、
トランスポートでは線材コアのゼロ抵抗は観測できず、鉄シース込みでは超伝導転移は観測されなかった。


磁性蓄冷材・GM冷凍機 1D-a05-08 座長 宮崎 佳樹

1D-a05 山田(千葉大)ら: 温度差を拡大させる手段として、キュリー温度の異なる磁性材料をAMR(能動的蓄冷器)に積層充填する手法を検討した。
1種類の材料(キュリー温度 16℃)を用いた場合に比べ、3層(キュリー温度4℃、10℃、16℃)を積層した場合に、低い環境温度での温度差が増大
する結果が得られたとのことである。AMRに流入する流体の温度制御は行っていないとのことだったが、環境温度を低くした場合の測定では、断熱が
不十分になっている可能性があるのではとの指摘があった。
1D-a06 正田(阪大工)ら: HoCu2に並ぶ高い磁気比熱と熱伝導度を示すHo-Er二元系窒化物蓄冷材の開発についての報告。これまで残存酸素の析出
による表面突起が原因で、充填率が低いという課題があった。酸素量の少ない出発原料を用い、さらに表面突起を超音波洗浄により除去することで、
充填率を52.5%に向上することができたとのことである。4.2 Kにおける冷凍能力は、HoErNを用いた場合に0.206 Wが得られ、HoCu2を用いた場合の
0.200 Wを上回った。低温領域の冷凍性能を向上するのに、蓄冷材の性能改善は一つの手段ではあるが、冷凍機全体としてどこを改善するのがより
効果的かを検討すべきとの指摘があった。
1D-a07 増山 (大島商船高専)ら: 2段GM冷凍機の2段目蓄冷材高温側にPb球、中間部にHoCu2球、低温側にセラミックス蓄冷材であるGd2O2S (GOS)球、
またはGdAlO3 (GAP)を充填し、さらに筆者が提案している等価的に蓄冷器形状を変化させる手法であるベークライト棒を蓄冷器高温側に挿入し、1・2段
ステージでの冷凍能力を評価している。GOSを30%充填したときに2段ステージの冷凍能力が最も改善している。高温側にベークライト棒を挿入し、蓄冷器
の形状を等価的に変化させた場合では、2段目ステージの冷凍能力はほぼ同程度であるが、1段目ステージの冷凍能力に改善したとのことである。高温側
にベークライト棒を挿入することで、なぜ1段ステージの冷凍能力が改善するのかとの質問があった。ベークライト棒の挿入により冷凍機内に流入する
ヘリウム流量が抑えられた効果であると回答があった。ベークライトは容積・形状を変える効果のみと考えてよいのか。熱伝導、熱容量など熱的な影響は
考慮されているかとの質問があった。熱伝導、比熱は蓄冷材に比べ小さいため考慮していないとの回答があった。
1D-a08 平塚(住重)ら: 超伝導単一光子検出システム用の小型化冷凍システム(2 K台)の研究開発として、リニア圧縮機の1次試作を設計検討した
内容の報告である。冷凍システムを小型化するため、圧縮機のアドソーバ、オイルセパレータを排除した無潤滑リニア圧縮機方式を採用し、現行容積の
50%減を目標としている。開発した圧縮機の単体試験では、図示効率0.90、モータ効率0.72、機械効率0.97、容積効率0.76となり、圧縮機効率0.48であった
とのことである。圧縮機効率が低い要因として、鉄損失が予測値よりも大きくモータ効率が設計値(0.8以上)よりも低いこと、ピストンが中立位置で
動作しないため無効容積が発生し、容積効率が低下していることが原因としている。モータ効率の改善と、オフセットバネによるピストンの動作点の改善
を行い、圧縮機効率向上を目指すとのことである。リニア圧縮機はスターリング冷凍機で用いられることが多いが、スターリング冷凍機ではなくGM冷凍機
に適用したのはなぜかとの質問があった。スターリング冷凍機は高周波動作のため、低温では能力が低下するため、極低温領域でGMを採用しているとの
回答があった。


LTSデバイス 1D-p01-05 座長 廿日出 好

1D-p01:電通大の徳山らはDolan法を用いたAlトンネル接合の作製にSiO援用法を適用、ブリッジ幅の揺らぎによる接合面積のばらつきを抑制する工夫を
行った。接合を作成し、4.2 Kで特定測定を行った結果、微分コンダクタンス曲線の実測値と計算値において、従来のDolan法よりよい一致が見られ、接合列
の特性が高い均一性を持つことを示す結果が得られた。
1D-p02:産総研の日高らは、Nb/AlOx/Nbジョセフソン接合(JJ)において、接合の電流密度Jc分布の調査を行うため、20μm角の大きな面積のJJ
を作製し、ウエハ上の接合のJc分布を測定した。その結果、ウエハの両端ほどJcが低く、中央ほど高い傾向が見られた。作製条件を同じとしても、日に
よって微妙な環境などの条件の違いからJcのばらつきがみられ、さらなる改善が期待される。
1D-p03:横国大のXuらは、コラッツ問題を計算するため、SFQを用いた16-bitのマイクロプロセッサーを設計・開発した。AISTのプロセスを用い、2815個の
JJと3.4 mm2の接合面積を有する。動作させた際のバイアスマージンを50 GHzまで計測した。さらなる接合の集積化と高速化が計画されている。
1P-p04:名大の田中らは、非磁気遮蔽環境でのSQF回路の動作を目的として、接合を3000個有する240bitシフトレジスタを試作し、これに磁気遮蔽機能を
有する上部グランド面を設け、グランド面がない場合の動作を比較した。グランド面は外部磁気遮蔽だけでなく、自己磁場の漏洩の遮蔽の効果も期待される。
グランド面ありの場合、予想される範囲のバイアスマージンが得られたが、なしの場合と比較してマージン幅は狭かった。設計の改善および磁気遮蔽性能の
調査など、今後の研究進展が期待される。
1D-p05:横国の佐野らは、SSIDをアレイ化した際の検出器信号の高速処理のため、SFQ回路を用いた高分解能時間測定回路(TDC)を開発しており、今回冷凍機
にSFQ TDCを組み込み、別の冷凍機で冷却したSSIDと接続し、非同期読み出し機能を用いて信号の高精度化を図った。非同期読み出し機能により、従来の同期
方式よりもイオン検出の読み飛ばしが減少した。接合数の増加やSSIDとSQF回路を一つの冷凍機に一体化することなどにより、半導体方式よりも優れた性能を
持つことが期待される。


小型冷凍機 1D-p06-10 座長 李 瑞

1D-p06 尾山仁(住友電工):大型電動車両の走行電費低減を目標に開発を進めている車載超電導モータと冷却システムの設計コンセプトについて報告
された。超電導モータの高効率特性を生かし、常電導モータの電動車両に対し、10%の電費向上を目指した開発を進めている。発表内容に対し、会場
聴衆の関心が高く、寿命、重量、力率、熱バランス収支などに関し、活発な質疑応答が行われた。
1D-p07 中野恭介(住友重機械):車載高温超電導モータ冷却用のスターリング冷凍機の設計製作、性能評価について報告された。開発目標は150 W@70 K,
COP0.07としている。冷凍機はスプリット型スターリング冷凍機を開発対象としている。試作機の結果として、電気入力2.15 kWで、150 W@70 Kが得られ、
COP0.07という高効率を実現している。
1D-p08 湯本健太(住友重機械):前報のスターリング冷凍機に使われたリニア圧縮機についての性能試験結果を報告された。軽量化、高信頼性、高効率
が開発の主な課題で、試作機の性能として、銅損が159.9 W、鉄損が93.5 Wといずれも設計値よりも高くなっており、これは圧縮機効率が約80%にとどまって
いる原因となっているようであった。
1D-p09 松井智亮(東京工大):磁性体の磁気熱量効果を除湿システムに応用するための調査研究が報告された。磁気熱量効果が除湿システムにも応用
できることを示唆した興味深い研究発表でした。具体的には、磁性材料に高分子吸着剤を塗布し多ものを消磁過程で発生した温度低下を利用し、吸着剤
に吸湿させ、次の励磁過程で発生した温度上昇を利用し、吸着剤に脱湿させる。という現象が確認されている。
1D-p10 野口芳直(東京工大):磁気冷凍機に用いられている、複数の異種磁性材料をカスケートする際の、最適配分比などを明確化するための手助け
として、材料充填ダクト内の温度分布を測定した結果と、それに基づく一次元伝熱数値解析結果を報告された。ただ、今回の報告では、充填ダクト内
は複数種類の材料ではなく、Gd単一材料が充填されている。その結果、充填ダクトの温度分布測定がおおむね成功し、一時伝熱数値解析も概ね実験結果
をも記できたという。


11月5日(水)
P会場 ポスターセッションI 14:15-15:30

センサー・SQUID計測 1P-p01-07 座長 日高 睦夫

鉄道総研の杉野等(1P-p01)はリニア車載超電導電磁石用光ファイバ温度センサーの初歩的なヒートサイクル(室温⇔77 K)試験、急冷耐性試験を
行い問題ないことを確認した。
クライオインの佐保等(1P-p02)は圧電アクチュエータを利用して磁気力を簡単に計測できる装置の開発を行っている。この
装置は小型化が可能で
あり開発に成功すれば、再生医療分野等様々な分野での使用が期待できる。
旭川高専の久志野等(1P-p03)は外部導体と中心導体に超電導体と常電導体を用いた多種類の極低温用セミリジットケーブルの高周波特性と熱伝導率の
評価結果を示した。中心導体の超電導体をCuNiで被覆し高周波透過率を低減することによりローパスフィルタの機能を持つケーブルも作製できる。
早大の安田等(1P-p04)は小動物用SQUIDを用いたラット心磁図解析に新しい手法を導入し、心エコー検査では検出できない早期の段階で右室肥大を
検出できることを示した。
早大の日向野等(1P-p05)は液体窒素クライオスタットの窓を薄くすることでHTS-SQUIDを検査対象であるラットの心臓により近づけることができる
小動物用心磁図システムを開発し、これを用いて心磁図計測が有効に行えるもとを示した。
理研の渡邉等(1P-p06)は理研RIビームファクトリーにおける重イオンビームのDC電流を測定するためのHTS-SQUID電流モニターを開発している。開発
した電流モニターシステムをビームラインに実装し、原子核実験時の電流測定に適用した結果、約300 nAの分解能で電流を測定でき、実用上有用で
あることを確認した。
産総研の馬渡等(1P-p07)は分子イオン検出器用MgB2ナノストリップの動作を時間依存Ginzburg-Landau (TDGL)方程式を用いてシミュレーションし、
実験とほぼ一致する結果が得られた。今後この手法を用いてナノストリップの線幅などパラメータの最適化を行っていく。


HTS通電特性 1P-p08-10 座長 柁川 一弘

1P-p08:木内(九工大)らは、作製法の異なる複数のY系コート線材を用いて、縦磁界下の臨界電流特性を測定した。その結果、全ての試料で横磁界
下の臨界電流よりも大きくなることを確認したが、劇的な臨界電流の向上を達成するためには、今後の材料学的な検討が必要と思われる。
1P-p09:孫(中部大)らは、周囲に電磁鋼板を配置した2枚の積層BSCCOテープ線材について、それぞれの線材を別々の電源で駆動した際の臨界電流
特性を測定した。その結果、同一方向に電流を流した場合、電磁鋼板がないときの臨界電流は単線に比べて減少するが、電磁鋼板を配置すると逆に
増加することを明らかとした。
1P-p10:タロウリ(中部大)らは、高温超電導テープ線材に臨界電流以下の電流を通電した状態で、突然電流を遮断した後の残留磁界分布をホール
素子により計測し、電流分布に換算した。その結果、使用したBSCCOテープ線材およびYBCOテープ線材ではともに、ゆっくりと電流を減少させた場合
と異なる電流分布が得られた。


HTSマグネット(1) 1P-p11-14 座長 淡路 智

本セッションでは、高温超伝導コイルに関する4件の報告がなされた。内訳は,希土類系RE123コイルに関して3件、Bi2223コイルに関して1件である。
王ら(KEK/総研大)は、YOROI構造を有するRE123コイルについて、実験と数値計算結果を報告した。10 Tの磁場中、30 Kで最大20 Aまでの通電により
発生したひずみは内層側で30-35 μ strain、外層側で20-25 μ strainとなり実験と計算で良い一致が得られた。このときの最大フープ応力は空間平均
で最大4 MPa程度となった。コイル口径を大きくするなどさらに大きな応力が発生した場合の解析に期待したい。
辻ら(早大)は、YOROI構造を採用した超伝導サイクロトロン用コイルの最適設計について報告した。YOROI構造では、コイル外枠の厚みと上下の側板
の厚みがパラメータとなり、これらを磁場精度と許容応力・ひずみの条件で,多目的遺伝アルゴリズムを用いて最適形状の計算を行った結果、体積
最小の解の導出をすることができたとしている。例として超伝導サイクロトロンの一部の円形パンケーキコイル(コイル1)の場合、厚み5 mmのシングル
パンケーキを仮定すると最適な側板厚みは1-6 mmとなるとした。
大保ら(フジクラ)は、自社のRE123線材を用いたφ200 mmボア5 Tマグネットの磁場精度と耐久性について報告した。運転温度約20-25 Kでは、遮蔽
電流により、発生磁場が計算値よりも約1.1%小さい値となった。また、作製から約21ヶ月の運転で、コイルの劣化は観測されていないと報告した。
名和ら(住友電工)は、Bi2223非絶縁コイルを作製し液体窒素浸漬冷却において、熱暴走試験を行った。過去に行った同形状のRE123非絶縁コイルと
比較すると、熱暴走電流はRE123コイルではIcの1.7倍であったのに対し、Bi2223コイルではIcの約3倍以上であった。これは、安定化材の電流密度と
n値が、Bi2223コイルで共に低いことに起因していると報告した。


Y系・MgB2バルク 1P-p15-21 座長 岡 徹雄

小林紀之ら(芝浦工大、1P-p15)は繊維強化した樹脂を被覆したGd123系バルク材料の反復冷却による捕捉磁場性能の劣化に抑制効果があることを示した。
横山悠介ら(東大、1P-p17)はパルス着磁による磁場捕捉過程において、穴欠陥を導入した場合の電流と磁場の挙動を数値解析し、穴の位置によって変わる
磁束侵入の挙動を評価した。
石原篤ら(鉄道総研、1P-p18)はMgB2バルク磁石を対象にRE123系と比較し、その均質性に優れた捕捉磁場分布を示した。
赤坂友幸ら(鉄道総研、1P-p19)は冷凍機冷却したリング状のバルク磁石を冷凍機冷却して得た捕捉磁場性能を評価した。
紀井俊輝ら(京大、1P-p20)はバルク超伝導体アレーによる磁場生成により、重ね合わせによる磁場増強など新たなアンジュレータへの応用を示した。
槌本昌則(北科大、1P-p21)は中空円筒バルクの電磁現象の巨視的解析を行い、焼嵌めや樹脂含浸を例に、磁場中冷却中の圧縮応力解析を行ったことを
報告した。


核融合(1) 1P-p22-23 座長 村上 陽之

1P-p22 井上(九大):Nb試料を透過する量子化磁束の挙動をSQUID磁気顕微鏡を用いて観察した。今回はJcへの影響が見られない1×1019 n/m2程度
の低線量の中性子照射の影響が報告された。その結果、中性子によって多数の微小欠陥が試料中に導入されることで、単一の量子化磁束の割合が増え、
複数本の磁束がまとまって存在する領域が減少することが統計的に示された。今後、Jc等のマクロスケールとの関連が解明されることが期待される。
なお、試験実施における課題として放射化への対策が重要になる。
1P-p23 寺﨑(総研大):GdBCO線材を用いた100 kA級の導体試験および電流分布解析の結果が報告された。試験は最大118 kAまでの通電に成功した。
臨界電流解析の結果、試験結果とあまり一致しない結果であった。これは線材Icの磁場角度依存性が正確に反映できていない事、試験サンプル内の温度
分布が大きく計測点と実際の温度が異なる事が原因と考えられる。今後、線材Icの磁場角度依存性の測定、サンプル内温度分布測定を実施し解析の精度
を高めていく計画である。GdBCO線材を用いた導体に対する、精度の高い特性評価手法の開発につながるものと考えられる。


送電ケーブル 1P-p24-27 座長 増田 孝人

直流超電導ケーブルの開発として、き電線用ケーブル3件、電力用ケーブル1件の発表があった。全般的に盛況であり、発表内容も素晴らしく、活発な
議論が行われていたと思います。
き電線ケーブルとしては、導入された場合のメリットについて計算された発表(1P-p26)があり、モデルをたて、どこに超電導ケーブルが導入されるの
わかりやすく解説されていた。また、実際に模擬線路へ適用したケースが紹介(1P-p24)されており、実規模レベルの検証がなされていた。電力ケーブル
用としては、ロシア・サンクトペテルブルクでのプロジェクトの紹介(1P-p27)があり、1 km級ケーブルの製造が完了している模様であった。
このように、超電導ケーブルの直流用途での開発も着々と進んでいることが判った。




11月6日(木)
A会場 9:00-17:45

マグネット解析(1) 2A-a01-03 座長 金 新哲

2A-a01:柴山(京大)Gd系高温超伝導コイルの超電導断面アスペクト比と遮蔽電流の大きさの関係をモデル計算した結果の発表であった。議論では、
今回はアスペクト比よりテープ厚さのみを変化させたのでその結果であることと、計算結果は通常テープ面の遮蔽電流が大きいことと一致しているが、
解析方法で他の要素、例えばターン数と絶縁厚さなどを考慮すべきとのコメントがあった。
2A-a02:松見(早大)今回はREBCO線材の長手方向における超伝導特性のばらつきが遮蔽電流磁場に与える影響を調べていて、議論では線材幅方向での
超電導特性のばらつきが与える影響をぜひ調べてほしいとのコメントがあった。
2A-a03:曽我部(京大) 薄膜超電導線材で巻かれたコイルにおける電磁界解析モデルに言及し、現在用いられている解析方法におけるメモリや計算
時間などのことを考慮しながら電磁界解析モデルを構築することを目指していた。今回の発表では、計算過程を省略または簡易化した結果による評価
などを行っていた。質問では、簡易化させた計算による影響についてでしたが、関数によりある程度は可能という回答と、コメントでは、コイルに
おけるターン厚さなどを考慮すべきなどがあった。


定常強磁場施設計画 2A-a04-08 座長 藤吉 孝則

東北大学金属材料研究所の25 T無冷媒超伝導マグネット(25 T-CSM)の開発に関連する5件の報告があった。
2A-a04:小黒(東北大)らは、CuNb/Nb3Snラザフォードケーブルに対する曲げ径の影響について報告した。25 T-CSMでは、Nb rod法CuNb補強Nb3Snラザフォード
ケーブルを、事前曲げ効果を利用してReact and Wind法で作製される。0.6%の純粋曲げひずみでIcが25%程度劣化し、0.2%の純粋曲げひずみでは劣化が
ないことを示した。
2A-a05:土屋(東北大)らは、外挿LTSコイルのクエンチに対する内挿REBCOコイルのクエンチ保護の方針について、LTSマグネットクエンチ下のREBCOシングル
パンケーキコイルにおける電磁応答を測定して検討を行った。
2A-a06:淡路(東北大)らは、25 T-CSMの最内層に用いられるGdBCOコイルについて、実機と同じ手法で作製したエポキシ含浸GdBCOコイルの20 Kの伝導冷却下
における18 Tの高磁場下で試験結果について報告した。通電電流130 A程度で電圧が発生し、コイルの一部が劣化した。これは、約0.4 MPaの剥離応力により
線材が劣化したと考えられることを示した。また、Bi系線材によるHTSコイルの設計方針について報告した。
2A-a07:宮崎(東芝)らは、25 T-CSM用内挿コイルのREBCO線材の許容剥離応力のばらつきに起因する特性劣化を防ぐために、離型処理したポリイミドテープ
で線材と共巻して樹脂含浸することで全ターンで分割してコイルを作製した。この全ターン分割した6積層パンケーキコイルを伝導冷却して通電試験を行った。
その結果良好な通電特性を有することを確認している。
2A-a08:花井(東芝)らは、最近開発された高強度BSCCO導体による25 T-CSM用内挿コイルの設計検討について報告した。ダブルパンケーキコイルを積層して
エポキシ樹脂で固めたBSCCOコイルでは、起磁力が4%程小さくでき、コイルのスペース効率も高くなることから、発生電磁応力が72%も低減できることを示した。


11月6日(木)
B会場 9:00-11:15

電力応用 2B-a01-03 座長 川畑 秋馬

2B-a01:最知(東北大)らは、SMES用高温超電導トロイダルコイルの線材使用量低減に関する検討結果を報告した。トロイダルコイルを構成する要素コイル数
やトロイダルコイルのアスペクト比を変化させた計算を行い、同じ貯蔵エネルギーでソレノイドコイルよりも線材使用量を低減できるコイル構成方法を示した。
2B-a02:東川(九大)らは、鉄道用超電導き電ケーブルと電力系統との過渡的相互作用の評価に使用予定のリアルタイム電力系統シミュレータ(RTDS)を用いた
ハードウェア閉ループ試験(HILS)システムの立ち上げ状況について報告した。2編成の列車が変電所間を移動する際のき電線に並列接続された超電導ケーブルに
流れる電流の時間変化を、超電導ケーブル部分をBi-2223線材で代替して構築したHILSシステムで首尾良く解析しており、事故時を含む今後の過渡的な状況下での
シミュレーション結果にも注目したい。
2B-a03:奈良(東北大)らは、非接触電力伝送装置の高効率化を図るために、従来の銅コイルをHTSコイルに置き換えた構成方法を提案した。HTSコイルを使用
した場合の伝送効率が銅コイルの場合の2倍以上となる実験結果を得たが、効率自体が低いため、今後は超電導特性が活かせ高効率化が図れるより低周波領域
仕様の回路構成に改善するとした。冷却を含めた効率評価の必要性や高効率化を図るためのコイル形状などに関する議論があった。


核融合(3) 2B-a04-08 座長 槙田 康博

2B-a04 JT-60SA用超伝導マグネット装置の製作と組立状況 吉田 清(JAEA)
4件連続でJT-60SA関連の報告がされ、本報告では建設の進捗状況が紹介された。欧州を中心にした国際協力のもと順調に進んでいる印象を持った。
海外から搬入されるTFコイルを始め大型の装置の、日本国内での陸上輸送路に関して重量、サイズとも問題ないルートが確保されている旨、質疑
応答の中で説明していただいた。
2B-a05 JT-60SA超伝導コイル用給電機器の設計と開発 木津 要(JAEA)
JT60-SAのコイル-電流導入端間の「フィーダー」(超電導バスライン)と高温超電導体を使用した電流導入部「HTC CL」の開発について報告された。
厳しいHTS CLの設置条件(磁場33mT以下、水平方向の許容荷重560N)を守るため、フィーダーによってコイルからHTS CLの距離を確保するとともに、
フィーダーの熱収縮による熱応力が軽減されるようクランク曲げ構造を取っている。このように苦労してHTS CLを導入することで、冷凍機の負荷の1/3
が軽減される旨、質疑応答の中で説明いただいた。
2B-a06 JT-60SA中心ソレノイドモデルコイルの臨界電流評価 村上 陽之 (JAEA)
春季学会にて報告した、JT-60SAの中心ソレノイド試作コイルの試験結果について、測定不調に陥った温度センサー(コイルの最内層の温度)の補正
を熱・流体コードによる解析結果を基に行った。該当箇所の温度は1Kほど供給温度より高くなることが解析で分かり、試作コイルのIc測定値がその
補正によって線材素線のIcと一致したことが示された。
2B-a07 JT-60SA ヘリウム配管の温度素子設置方法 夏目 恭平(JAEA)
JT-60SA磁石の寒冷や電流の導入部となるバルブボックス(VB)部及びコイルターミナルボックス(CTB)部の設計検討の1つとして、内部配管への
温度センサー取り付け方法について、①配管にセンサーが仕込まれた細管を挿入する方法と②配管外部にセンサーホルダーを銀ろう付けする方法
性能を 、試験ベンチを製作し、流体温度との差異を測定することで確認した。いずれの方法も温度センサーとして使用するセルノックスの保証
感度内(10 mK)で流体の温度と一致した。従ってより簡単な後者の手法で温度センサーを取り付けることにする。
2B-a08 導体接続方式ヘリ各コイル設計のためのREBCOテープの機械的ラップジョイントの引張り・せん断強度評価伊藤 悟 (東北大)
本セッション最後の講演は、NIFSのFFHR-d1に向けた提案の1つREBCOコイルに関して、その特徴の1つである機械的ラップジョイントの基礎実験結果
報告であった。REBCOテープ線材どうしを、インジウムホイルを挟んで重ね合わせ、面圧をかけただけで電気接続をするものだが、必要な面圧を
かければ、線材に係る電磁引張り応力を凌ぐ引張強度を持つという、実験結果の報告がされた。安全ファクターが考慮されていない、実際に巻線の
中で面圧をかけ続けるのか、という質問がされた。


11月6日(木)
C会場 9:00-11:15

MgB2(1) 2C-a01-03 座長 木内 勝

2C-a01: 水谷(東大)らは、MgB2の高臨界電流密度Jc化のためにコネクティビティに注目し、自己焼結法ex-situ法の最適化を行った。MgB2原料粉末
は低めの600℃、24hで合成した。その粉末を粉砕後SUS316管に充填、一軸加圧下後、様々な温度でMgB2バルクを作製した。特に焼結温度900℃以上で、
加圧焼結試料と同程度のコネクティビティ55%が得られ、この手法の有効性を示した。
2C-a02:葉 (NIMS)らは、Mg棒と表面にコロネン(C24H12)をコーティングした硼素を用いて内部拡散法(IMD)で100 mのMgB2線材を作製した。3.5 ㎝長
に切り出した短尺材10本の臨界電流Icは同程度で、長尺線材作製法としてこの手法が有効であることを示した。今後はこの線材を用いてコイルを
試作し、その特性評価の報告を予定している。
2C-a03:茂田(京大)らは、液体水素冷中でのMgB2線材の利用に注目し、その基礎特性評価を行った。今回はMgB2に電流を直接通電する四端子法
を用いて、磁界中のIc特性を測定した。Icは液体水素中に於いても磁界の増加と共に減少する特性を示した。但し、Icの依存性については他の
冷媒との比較が必要との指摘があった。今後の報告に期待したい。


Y系の合成法と特性 2C-a04-08 座長 山崎 裕文

2C-a05:下山(東大) YBCOとBi2223焼結試料の粒間Jc特性の向上のため、一度焼結した試料の粉砕・再焼結の工程を行わず、一度の焼結で最終試料
とすることを試みている。Bi2223焼結体において、残留磁化の印加磁界依存性で、粒内・粒間への磁界侵入による2段転移が観測されなかったことを
報告した。
2C-a06:元木(東大)フッ素フリーMOD法で単結晶基板、配向金属基板上へYBCO薄膜を作製し、塩素添加の効果を調べている。塩素はBa2Cu3O4C12酸塩化物と
して YBCOマトリクスに取り込まれるが、それとYBCOの格子整合が良好であるため、YBCOの結晶性が向上すると言う点が興味深い。塩素添加によるJc向上
効果について、数多く生成する積層欠陥の周囲の欠陥がab平面相関ピンとしてだけでなくc軸相関ピンとしても働くと推論されたが、座長から、「積層欠陥
周辺部の(部分)転位は、ab平面相関ピン、および、ランダムピンとして働くが、c軸相関ピンとして働くことはあり得ない」とのコメントがあった。
2C-a06:山田(島根大) KOH をフラックスとしてYBCOの出発原料とともに加熱する方法により、YBCO相をできるだけ低温度で作製することを試みており、
NdGaO3, SrTiO3基板上にエピタキシャル膜が得られている。
2C-a07:舩木(島根大) 関連して、溶融水酸化物法で各種希土類元素を含んだ(RE)BCOをSrTiO3基板上に作製している。比較的イオン半径の大きなREを用いた
場合に123相が得られ、そうでない場合には124相が得やすいことを見出し、525℃という低温度でNd123エピタキシャル膜の作製に成功している。


11月6日(木)
D会場 9:00-11:15

センサー・SQUID計測 2D-a01-03 座長 久志野 彰寛

2D-a01:井上(神戸大)らにより、液体水素運搬船搭載のタンクに用いる、長尺液面センサー用MgB2線材から切り出したショートサンプルの超伝導特性
試験に関する報告がなされた。自作試験装置およびLabVIEWによる計測プログラム、異なる場所から切り取られたサンプルから得られた電気抵抗値の
温度依存性の違い等ついて議論がなされた。
2D-a02:廿日出(近畿大)らにより、高い磁場耐性を有するHTS-SQUIDマグネトメータの研究・開発に関する報告がなされた。マグネトメータ単体および、
メッシュ構造を持つHTS薄膜、メッシュ構造を持たないHTS薄膜をそれぞれ積層した場合のDCおよびAC磁場中での特性試験結果が紹介された。SQUIDの
変調電圧Vppおよび磁束ノイズS1/2に変化が現れるAC磁場強度はメッシュのない薄膜を積層した場合が最も大きいという結果が得られ、最終的にメッシュ
有りと無しのどちらが良いのかといった議論がなされた。
2D-a03:続けて廿日出(近畿大)らにより、2D-a02で紹介されたHTS-SQUIDマグネトメータをロボットアーム式非破壊検査装置に搭載した際のノイズ特性
および欠陥検出実験の結果が報告された。鎖交磁束を打ち消すために導入されたアクティブシールドが有るときと無いときのノイズがそれぞれ計測され、
アクティブシールドによりノイズが低減したことが示された。またアルミ板の欠陥の検出実験結果から、深部欠陥の検出にはグラジオメータに比べ
マグメトメータの方が適していることが示された。


冷却システム・教育 2D-a04-08 座長 野口 隆志

3件の冷凍・冷却に関する研究報告と2件の教育面での実施報告があった。お歴々の蘊蓄のあるご指摘は大変興味深いものがあったが、もう少しテキパキ
と発言を終えていただきたいものである。
2D-a04:東谷(東北大)らは、2016年度運転開始予定である大型低温重力波望遠鏡KAGRAの、冷却源と冷却対象部を結ぶ構造物の相当熱抵抗を測定した。
今回評価した冷却対象は干渉計の鏡ラインとそれを囲むインナーシールドラインである。今後の評価の指標となる結果が得られたとのことであった。
会場から、構造物の熱伝達経路の温度勾配が一様になっていないので、途中に予期せぬ熱侵入が伺われるとの指摘があった。
2D-a05:安齋(東工大)らは、窒素を作動流体としたサーモサイフォン型ヒートパイプの熱輸送限界を測定し、気液対向流管の単管式/二重管式のそれを
比較した。結果は単管式:22 W、二重管式:25 W となり、対向流部でのフラッディングが防止できたことによる二重管式の優位性が確認できたが、別の
不都合要素があることも予想されたとのことであった。会場から二重管式の液通路・気体通路の流路断面積の最適化が必要であるとのコメントがあった。
2D-a06:三戸(NIFS)らはNIFSで所有しているLHe/超臨界(S)He冷却機を改造し、現状冷却機能を維持しつつ、4.5 K~300 KのGHeによる温度可変型HTS試験
装置としたことが報告された。寒冷発生用圧縮機の吐出圧を1 MPa以下に保つことで、高圧ガス保安法上の解釈を考慮したとのことであった。保安法上の
解釈については地域性もあり、一例に過ぎないのではないかとの指摘があった。また格段熱交換器は机上解析によって新規設計/製作されたものである
とのことであった。
2D-a07:当学会主催の2014年度『低温技術夏合宿 - 77K 小型冷凍機を作ろう -』の成果報告が、神戸製鋼、住重、九大、ジェック東理社の受講生を
代表して神戸製鋼の松本からあった。小型パルス管冷凍機製作の実習は今年で3回目となる。同一のパルス管/畜冷管を用い、バッファー/オリフィス/
配管および開閉自在電磁弁を付加し、パルス冷凍機の発展の歴史をベーシック/オリフィス/ダブルインレットの順に、その到達温度が低下する様を
示した。フォーバルブ式は機材の不具合から付加できなかったとのことであった。
2D-a08:星野(明星大)らから、小中学生を対象とした『夏休み科学体験教室』の内、液化窒素と超電導のテーマの実施報告があった。一連の液体窒素
による冷却冷凍デモおよびHTS浮上・磁束トラップデモの他、液体窒素による空気液化と液体酸素生成過程において、市販の真空断熱調理器を用いた空気
液化を試み、濃い液体酸素の残留を確認したとのことであった。子どもが一番印象に残したのは何か?の問いには「凍結マシマロの試食」との回答であった。


11月6日(木)
P会場 ポスターセッションII 13:15-14:30

磁気冷凍機 2P-p01-02 座長 平塚 善勝

2P-p01:竹下(金沢大)らは、温度領域20~110Kにおける磁気冷凍機の磁性体について、高温領域では強磁性体特性を有し、低温領域で反強磁性特性を
示すRTAl(GdNiAl,DyNiAl,HoNiAl,ErNiAlの4種)に着目し、磁気熱量効果についての研究報告がなされた。その結果、DyNiAl,HoNiAl,ErNiAlは温度変化
に対しエントロピー変化が非常に急峻で大きな値を示すが、GdCuAlはブロードな特性だが、その変化量は小さく改善すべく今後の課題となる。
2P-p02:植田(NIMS,千葉大)らは、X線センサーを100 mKまで冷却可能な4ステージADRにおいて、3、4ステージの駆動試験、主に熱スイッチの動作確認を
行い、4ステージでは正常に断熱消磁が行われ温度が低下したが、3ステージで熱スイッチの動作が正常に行われずに温度が低下しなかった。原因として
熱スイッチに使われている吸着剤の吸着が正常に行われなかったことによるとしており、今後改善し性能確認を行なってくと報告していた。


冷却システム 2P-p03-07 座長 中山 知紀

2P-p03:大都(原子力機構)らから、J-PARKパルス中性子源用低温水素システムへの高速中性子の入射により超高臨界圧水素の圧力上昇を吸収する
アキュムレータの開発報告がなされた。分割型にすることで交換作業時間を短縮、大口径厚肉ベローズを溶接できる新技術を開発して高耐久・長寿命
を実現、ベローズの傾きをなくしガイドバルブとの接触をなくして伸縮時のヒステリシスを抑制できることを示して、所定の性能を発揮できることが
示された。
2P-p04:高橋(エア・ウォーター)らから、低温液化ガス用の軸シールレス小型遠心ポンプの開発報告がなされた。液体窒素を用いた流量・差圧性能
試験で、インバータの回転数制御により15.5 L/min ~ 60 L/minまでの幅広い流量に対応が可能であるとのことであった。また、このような小流量で
高揚程、長寿命の小型の軸シールレス遠心ポンプは国内では類をみない成果とのことであった。早い時期の市販化が期待される。
2P-p05:鷹見(NIFS)らから、大型クライオプラントのプロセス研究・教育用シミュレータの開発報告がなされた。プロセス計算ソフトVisual Modeler
に液体ヘリウム物性やクライオプラント特有な機器の特性を実装するためのユニットモデルの開発がなされ、主にポンプ性能の無次元化によりSHeポンプ
性能を連続的に表現できるモデルと長尺配管内の等容過程での熱力学的変化を計算できるモデルの開発に成功している。
2P-p06:太田(上智大)らから、先進超電導電力変換システムにおけるSMES用超電導磁石を液体水素で冷却するためのクライオスタットの開発報告が
なされた。水素の可燃性を勘案して高い防爆設計とサーモサイフォン循環方式を採用していることが特徴とのことであった。液体水素からの冷熱を超電導
磁石に伝導する伝熱アルミ板の渦電流損失を200 A、1 Hzの条件で有限要素法により解析した結果70 Wの損失が発生すると報告された。本クライオスタット
は、この発熱に対しては十分な冷却能力があるため問題はないとのことであった。
2P-p07:イワノフ(中部大)らから、200 m DC HTSケーブルの液体窒素流通冷却試験時の流量と温度測定結果が報告された。高低差が2.6 mあるHTSケーブル
において、液体窒素循環ポンプを6時間停止中でも、ヒータによって液体窒素を加熱することで加熱によってサーモサイフォン現象を発生させて液体窒素
を2 L/minの流量で流通できることを確認し、このときの液体窒素出口温度は最大で80.3 Kであることが報告され、これはHTSケーブルを十分運転できる
温度であるとのことであった。


Y系諸特性 2P-p08-13 座長 吉田 隆

本セッションでは、Y系諸特性に関して6件の発表がなされた。
2P-p08:藤田ら(フジクラ)は、REBCOの接続に対して半田を用いた接続の接続抵抗と機械特性の報告を行い、歪み試験において引張試験に関しては
一軸方向に均一に引っ張ることができていないため今後検討していくとのことである。
2P-p09:X.Jinら(理研)は、REBCO線材のREBCO層と中間層にのみ内部スリットを導入した多芯テープの作製方法と引張強度等について発表し、多芯
テープ線材の引張強度はスリット数が増えても元の単芯線材と機械強度に変化はなかった。磁化率の改善を今後の課題としている。
2P-p10:古木ら(熊本大学)は、重イオン照射を用いて2方向に交差した柱状欠陥を印加電流方向と平行にGdBCOコート線材内に導入したときのJc
影響の報告を行った。柱状欠陥を導入する交差角が広くすることで広範囲の磁場印加角度に対してJcの向上がみられた。
2P-p11:上瀧ら(熊本大学)は、BMO/YBCO擬似多層膜のBMOの種類、粒径が超伝導特性に与える影響を報告した。同温度作製した際に、BSOはBHOに
比べで大きな粒子として成長し、歪みの影響を受けてc軸方向にそろって配列しc軸相関ピンとして機能したと推察。
2P-p12:久保ら(首都大学東京)は、Ti添加Gd123バルクおよびMOD法Gd123薄膜の臨界電流密度特性の発表を行った。バルク体においてTiをGdBCOの
本焼の段階で導入することにより、Gd123の粒間に存在する弱結合の改善が行われ、粒間電流の向上を確認した。
2p-p13:市川ら(ティーイーピー)は、Y123及びYにCaを5%置換したY(Ca)123焼結体の成型時の圧力に対する超伝導特性や微細組織について報告を
行った。Caの有無で密度が異なり、圧力や焼結温度が高いほどクラックが減少して緻密な構造となっていた。粒間のJcも成型時の圧力が大きいほど
高い値を示していた。


マグネット解析(2) 2P-p14-18 座長 川越 明史

2P-p14:河原(九大)らは、転移並列導体で巻線したコイルにおいて、並列導体を構成する素線間の電流分流特性について解析した結果を報告
した。今回は、電流分流特性に及ぼすIcのバラツキとn値の影響について解析した。周波数が高いとIcn値に依存せずほぼ一様に流れるものの、
周波数が低くなり直流に近づくと、Icのバラツキによって偏流すること、またその偏流の大きさはn値が小さい方がより大きくなることを示した。
2P-p15:槻木(九大)らは、転移並列導体で巻線したコイルにおいて、転移位置ズレに起因する付加的交流損失の解析結果を報告した。今回は、
n値モデルを解析に導入し、超伝導素線に抵抗が存在する条件で変動外部磁界を印加した場合の解析を行った。励磁速度を遅くすると付加的損失の
最大値が小さくなることを示した。
2P−p16:益田(九大)らは、鞍型ピックアップコイル法を用いてREBCO線材の磁化緩和特性の測定結果の考察について報告した。鞍型ピックアップ
コイル法で磁化の緩和が測定できること、またその緩和特性の、直流バイアス磁界依存性、温度依存性が測定できることを示した。
2P−p17:荒川(早大)らは、層間を部分的に絶縁することによって、無絶縁パンケーキコイルの励磁速度の問題を解決しようとした部分絶縁REBCO
パンケーキコイルについて、簡易的な回路モデルによる通電特性の解析結果を報告した。コイルの励磁速度を決める時定数に及ぼす部分絶縁の影響
は、パンケーキコイル内の層間接触抵抗を用いることによって、簡易的な回路でも評価可能であることを示した。
2P−p18:中田(早大)らは、無絶縁REBCOパンケーキコイルの遮断特性に及ぼす接触電気抵抗の不規則分布の影響を解析した結果について報告した。
層間の非接触部分がランダムに存在する場合、遮断時に消費されるコイルの蓄積エネルギーが、コイル内でほぼ均一に消費されることを明らかにした。


遮蔽電流 2P-p19-21 座長 田中 秀樹

2P-p19:柁川(九大)らは、HTSテープ線材を用いたMRI/NMR用超電導コイルにおける遮蔽電流対策として、付加的なコイルにより交流磁界
を短時間印加する解決方法を提案している。本報告では、付加的なコイルをcoated conductorで作製しその有効性を示した。コイル形状が
複雑なMRIの場合は交流縦磁界が有効であろうことなどが議論された。
2P-p20:今市(早大)らは、REBCOコイルにおける遮蔽電流に関し、200 mmφ10 T級均一磁場発生コイルを対象として、線材の細線化による
遮蔽電流抑制効果の計算結果を示した。細線化のみでは磁場均一化には不十分であろうことなどが議論された。
2P-p21:梶田(上智大)らは、1.2 GHz LTS/HTS NMR磁石を対象に、コイル負荷率がシムコイル補正効率に与える影響について報告した。
REコイルよりもBiコイルのほうがシム効率が高いこと、Biコイルにおいても、超伝導シムコイルのみでの補正は困難で、鉄シムなど別の補正
が必要となることを示した。


超電導応用/電流リード 2P-p22-26 座長 東川 甲平

2P-p22:福本(鉄道総研)らは、超電導バルクを用いた磁気軸受について報告した。同極を対向させた永久磁石をシャフトに用いることによって
局所的に高磁界を形成し、その磁界をリング状に加工したバルク材で捕捉することで、非接触の磁気軸受を実現していた。一方、実際の磁気力と
解析値には乖離があるようで、今後の最適化には形状や位置関係を詳細に反映した数値解析が助けになるのではないかと感じた。
2P-p23:松浦(首都大)らは、磁気アルキメデス効果を用いた有価資源の回収について報告した。実際に金などの希少金属がそれぞれに対応する
位置に浮上している様子が写真で示されており、一部の金属については分別して回収することも可能そうな印象を持った。
2P-p24:安齋(首都大)らは、磁性活性炭の用いた磁気分離応用としてフミン酸の除去について報告した。籾殻とコーヒー粕といった炭素系の
廃棄物に硝酸鉄によって磁性を持たせ、両者が捕捉するフミン酸を磁気分離によって取り除こうとするものであり、磁性の持ちやすさとフミン酸
の捕まえやすさのトレードオフの観点から、今回は籾殻の方で良好な結果が得られていた。
2P-p25:松村(東海大)らは、YBCOテープ材を用いた電流リードについて、素線の電流分布の観点から性能を評価していた。束ねたテープ材の
電流容量を、素線を順に取り除くたびに評価することで、素線が負担していた電流容量を評価した結果、ほとんど電流を流さない素線があるなど、
大きなばらつきがあることが明らかにされていた。接続抵抗にばらつきがみられないため、原因は素線の性能のばらつきということであったが、
接続抵抗の評価手法に問題があったため、多人数を交えたディスカッションの結果、やはり接続抵抗のばらつきの可能性が高いという結論になった。
2P-p26:髙橋(昭和電線)らは、同社の期待の製品であるnPAD-YBCO電流リードについて、機械特性の報告があった。本製品は、線材特性の向上に
よってコンパクト化・熱侵入量低減を実現したものであり、良好な機械特性も示されたことで、今後の導入拡大が期待される。


電気機器 2P-p27-30 座長 福井 聡

2P-p27:九大・九電・フジクラ・SRLのグループから,20 MVA級超電導変圧器の限流動作時の応答特性と,変圧器の鉄心寸法や線材の安定化材の
厚さとの関係について,数値解析による評価を行った結果が報告された。
2P-p28:明星大・東大のグループからは,薄膜型限流素子のSN転移時の温度・電位分布を視覚的に捉えて,それらの相関性を把握するための基礎的
な研究結果は報告された。今後は,本評価手法を限流器設計にどのように生かすかが課題と考えられる。
2P-p29:九大・富士電機・ISTECのグループからは,15 MW級全超電導発電機の電気設計が報告された。発電機直径と重量や線材長との関係が示された。
2P-p30:着磁した高温超伝導バルクを回転機の回転子に適用すると,回転時に発生する変動磁界により,バルクの補足磁界が減少してしまう問題が
ある。この問題への対策として,横浜国大・新潟大・上智大のグループから,バルク周囲に金属リングを設置して変動磁界を遮蔽する方法について
の検討結果が報告された。




11月7日(金)
A会場 9:15-12:00

安定性・保護 3A-a01-05 座長 松本 真治

コイルの安定性・保護に関する5件の発表があった。
3A-a01 武藤 翔吾(東北大):LTS/REBCO強磁場磁石において、外部LTSコイルがクエンチした場合のREBCOコイルの振る舞いについて報告が
あった。低温ほどホットスポットが発生し、焼損しやすい。発生電圧を抑えているが、実際の保護においては、発生電圧をできるだけ高く
して素早く通電電流を減衰させる必要があるのではとの質問があった。
3A-a02 土屋 雄司(東北大):前報に関連する発表で、実験結果と数値計算結果との比較が行われた。数値計算結果は実験をよく再現し、
低温ほどホットスポット領域が小さいとの結果が得られた。
3A-a03 山口 貴寛(住友電工):大出力回転機(20 MW)用コイルの保護を目的とし、クエンチ検出電圧と通電電流減衰時定数の関係について
報告があった。BSCCO線材で製作した実機サイズコイルは、電流減衰時定数40 sec、クエンチ検出電圧0.06 Vにおいて劣化が見られた。
3A-a04 久保 俊貴(鹿児島大):ポインチングベクトル法による、超伝導変圧器の巻線部の異常検出方法の有効性について報告があった。
超伝導変圧器の上下対称な位置に設置したピックアップコイルが検出するエネルギーフローの差分を監視することで、巻線部に生じた異常を
検出することができた。
3A-a05 楊 叶(九大):強い放射線の環境下で運転されるCOMETパイ中間子捕獲ソレノイド磁石の安定性について報告があった。磁石の運転
時間とコイル温度上昇の関係が示された。また、放射線の影響でアルミ安定化材のRRRが劣化するため、クエンチ時の温度上昇のRRR依存性が
示された。


HTSマグネット(2) 3A-a06-10 座長 大保 雅載

3A-a06 小方(鉄道総研):これまでのRE系高温超電導磁石の開発経緯が示され、実機大(1070 mm×500 mm)の模擬レーストラックコイルを製作、
クライオスタットに収納後、温度40 Kで250 Aを電流リードに通電、冷凍機停止後の温度特性が報告された。50 Kに達するまでの時間は55分と予想より
長く、今後、実機大RE系コイルに置き換えて評価を実施する計画とのことである。
3A-a07 水野(鉄道総研):前報との関連報告で磁石構成部材のアウトガス評価に関する報告であった。有機物で構成されるGFRP、PTFE、多層断熱材に
ついてbackground測定とアウトガス測定を実施したところ、評価中、backgroundの値も変化することが確認されたため、再評価を含めて吸着剤の評価も
検討するとのことであった。
3A-a08 渡部(中部電力):これまで開発した高強度パンケーキコイル(Yoroi-coil)構造について側圧板をGFRPからCFRPに変えた場合の14 T外部磁場中
の電磁力特性が調べられた。結果、基板のみで負担するBJRで計算した応力は2.0 GPaでGFRPを用いた場合の1.7 GPaを上回ったが、超電導線材の
歪みは予想より大きく、CFRP側板での応力負担が十分でなかった可能性があるとの報告であった。
3A-a09 白木(鹿児島大):ポインチングベクトル法を用いたBi2223コイルの交流損失測定に関する報告で、軸長84 mm、外径65.8 mmの全36ターン
ソレノイドコイルの巻線部周辺に内側11対、外側11対のピックアップコイルを配置し、液体窒素中での交流損失測定を評価。実験値と理論値は良く
一致しているとのことであった。
3A-a10 柁川(九大):東北大で計画されている25 T無冷媒超電導マグネットにおけるHTSインサートコイルで発生する初期励磁時の交流損失に関
する発表で、超電導線材の平行磁界損失については無限平板とみなして計算する一方、垂直磁界損失は線材間の磁気的相互作用を考慮する必要がある
ため、両者の交流損失理論表式が導出された。HTSインサートと外側のLTSバックグラウンドコイルを60分で励磁する場合の交流損失は7 Wと見積もられた。




11月7日(金)
B会場 9:00-15:45

磁気分離 3B-a01-06 座長 酒井 保蔵

本セッションは超電導磁気分離による除染技術の実証研究など6件の報告があり、磁気分離の様々なアプリケーションについて活発な議論が交わされた。
3B-a01:野田ら(神戸大・他)はステンレス球を磁気フィルターとした磁気分離装置を検討し、SUS440Cのステンレス球(φ2.38mm)を用いた場合に良い
結果が得られたとした。計算で予想できる、フィルターの閉塞などについて議論された。
3B-a02:岡田ら(物材機構・他)は火力発電所のボイラーのスケール防止を目的としたボイラー水中の鉄酸化物粒子の磁気分離による除去の可能性に
ついて、計算機シミュレーション結果を報告した。20℃より200℃の方が、線材配列は千鳥に並んでいる方が、フィルター間隔は1 mm(狭い)方が分離
性能は向上すると報告した。フィルター間隔や、流体の流れについて議論があった。
3B-a03:水野ら(大阪大・他)はa02と同じ研究グループからベンチ実験による報告である。高温・高圧でマグネタイトとヘマタイトからなる模擬スケール
懸濁液の超電導磁石による高勾配磁気分離実験をおこなった。実験条件が実情に合っているのか、マグネタイトのみを除去すればよいのかなど活発に
議論された。
3B-a04:福井ら(新潟大・他)は除染範囲のフリーソフト(CDE)による最適化について紹介した。除染場所の選定について、道路や住宅など人の動線や滞在
時間が考慮されるべきなどの議論があった。
3B-a05, a06:岡田ら(大阪大)、野村ら(大阪大)は、それぞれ、住宅建材のセシウムイオンの動態および汚染土壌の減容化について報告した。前者はセメント
瓦や木材などの深さ方向の放射性セシウムの分布について実際に調査した結果を報告した。深さ方向の分析方法について、鉄さびに特異的にセシウムが
吸着する理由などについて議論した。後者は分級による汚染土壌の減容化の効率を上げるため、凝集した微細粒子の破砕、大粒子に付着した微細粒子の
脱離をボールミルにより検討した。粉砕により除染効率が上がる一方、減容化率が低下する点などについて議論された。


産業応用/磁場応用 3B-a07-12 座長 和久田 毅

3B-a07 坂本(名大院工):単一磁束量子回路(SFQ)の集積度向上に関する研究。小型化してもSFQ回路の所要のループインダクタンスを得るため、Nbよりも
磁束侵入長の長いNbTiNを使ってインダクタンスを増やす。窒素分圧制御によりNbの約1.9倍の結果が得られた。
3B-a08 石川(名大院工):超伝導回路用の高集積化可能なメモリとして磁性体(PdNi)を検討。動作温度4 K付近で磁化反転動作するようにNiの量を低減、
SQUIDループ上に直接PdNi薄膜を形成し特性を評価。Ni7.5%のものは15 Kでは磁化反転に伴う信号が観測されるが4.2 Kでは観測されず。保磁力が大き
すぎると考えられるとのこと。⇒磁化反転は観測されているが大きさがメモリとして使うには小さいのではないかとのコメントあり。
3B-a09 大當(鹿児島大):リニア型のリランクタントモータの最適設計に関する報告。プレス軸や射出軸向けの小型・短ストロークがターゲット。超電導
コイルに印加される垂直成分磁場を低減するための鉄心形状についても言及。
3B-a10 竹内(阪大):ドラッグデリバリーシステムにおいて回転磁場利用により特定箇所に磁性粒子を集積させる。血管が回転磁場の回転軸に平行かつ
磁場回転中心にある場合にのみ粒子が集積される。模擬血管と1Hzの回転磁場にて磁性体集積を実証。⇒回転磁場を人体に印加でき、かつ、局所的に磁場
を絞れる磁石の実現が課題と考えられる。
3B-a11 佐々木(八戸高専):積極的に永久磁石や磁性体で磁場のひずみを発生させて磁気力を改善する研究。永久磁石利用により超電導バルク単体に比べ
30%磁気力増加。
3B-a12 横山(足利工大):卓上型のコンパクトな超電導バルク着滋装置開発に関する報告。全長548 mm、100 V動作、消費電力160 W(スターリング冷凍機
11 W@77 K)で、φ45のGdBCOにバルク表面磁束密度2.8 T、磁石表面で1.3 Tを着滋。


NMR(2) 3B-p01-04 座長 渡部 智則

このセッションでは、理研、上智大、千葉大、JASTEC、NIMS、JEOL RESONANCEの共同研究で、「1 GHzを上回る超高磁場・コンパクトNMR磁石の実現に向けて」
と題する4件の連続した発表があった。
3B-p01:柳澤(理研)は、内層コイルをBi-2223やREBCOとした400-500 MHzのLTS/HTS磁石の開発の成果を基に、遮蔽電流磁場の影響やフープ応力の耐性から
超高磁場NMR磁石の材料を比較して開発の展望を報告した。現時点ではNi合金を複合化して高強度化したBi-2223線材が最も有望であり、さらに、Bi-2212に
ついてもNHMFLとNMR磁石を開発し、励磁試験・NMR測定試験を行うとのことであった。
3B-p02:朴(千葉大)は400 MHz LTS/REBCO NMR 2号機において、室温シムを用いた磁場均一度の調整を行い、LTS NMRのレベルに近い分解能と感度を達成し、
タンパク質試料の最高難易度のNOESY測定に成功したと報告した。
3B-p03千葉大の許は高強度Bi-2223線材を用いたコイルの許容フープ応力の評価について報告した。結果としては、400 MPa以上のフープ応力に耐えることが
でき、高い電流密度の内層コイルが実現できると報告した。
3B-p04:井口(上智大)は、高強度Bi-2223線材を用いた1.2 GHz LTS/Bi-2223磁石の基本設計を行った。鉄シムと超電導シムコイルを組み合わせた磁場補正
によって、高分解能NMR測定に必要な均一磁場が得られるとのことであった。


高磁場MRI 3B-p05-08 座長 三浦 大介

3B-p05 戸坂(東芝):経済産業省の「高温超電導コイル基盤技術開発プロジェクト」の一環として高磁場MRI用高温超電導磁石開発を東芝と早大、阪大、
北大、京大の共同で実施中であるが、今回はその進捗の発表があった。2015年度に高磁場に強いREBCO線材を用いた室温ボア100φの小型10 T級マグネットを、
最終年度となる2017年には室温ボア300~600φの7 T級マグネットを試作し、撮像評価を行うことで10T級MRIに必要なコイルシステム技術の確立を目指して
いる。今回はその設計・製造基盤技術の指針として①伝導冷却型マルチパンケーキコイル方式によるコイル設計の提案 ②REBCOテープ線材の使用に起因する遮蔽
電流対策として、その定量的な予測技術と抑制技術の開発 ③遮蔽電流以外の不整磁場抑制技術 ④その補正技術等の開発等の概要とスケジュールの説明がなされた。
3B-p06 宮崎(東芝):上述したプロジェクトの手始めとして極小口径の8 T級コイルの試作が行われた。シングルパンケーキコイルを22枚積層し外周部で接続
したマルチコイルで各層ごとにアルミ冷却板を接続して2段GM冷凍機で伝導冷却している。特性は10 K、166.2 A通電で7.66 Tを発生した。計算値では8.07 Tで
あるので0.4 Tほどの減少はテープ線材使用による遮蔽電流の不整磁場の影響である。
3B-p07 植田(早大/阪大):上述した極小口径コイルの遮蔽電流による不整磁場を定量的に予測するためのシミュレーションコードを開発した旨の報告が
なされた。使用したREBCOテープ線材はSuper Power社から購入しているのでIcの磁場、角度依存特性値をカタログから読み取りn値 = 30のモデルを使っている。
非線形性を考慮した3次元電磁界解析プログラムで計算した遮蔽電流は積層コイルごとに実験値と概ね一致しているが、バラツキは線材ごとの特性の差によると
している。
3B-p08 持田(早大);上述の遮蔽電流による不整磁場をさらに詳細に調査するために、同線材を使用したマルチモデルコイルを作製し、コイルの励磁条件を
変化させて遮蔽電流分布を解析し、それを可視化した。その結果、遮蔽電流の電流密度分布の偏りによる不整磁場の振る舞いを説明することができた。


11月7日(金)
C会場 9:00-12:15

加速器(2) 3C-a01-06 座長 岩本 晃史

初めにSuperKEKB 衝突点用超伝導電磁石システム(6)について5件の報告があった。
3C-a01:大内(KEK)は、副題:ビーム最終収束システムの建設状況で、計画全体の概要について説明した。
3C-a02:有本(KEK)は、副題:超伝導4極電磁石の製作・低温試験結果(第1報)で、4極磁石の冷却・励磁試験の結果を報告した。全てのコイルは必要な仕様を
満たしていることが確認された。
3C-a03:王(KEK)は、副題:超伝導ソレノイドの設計で、補正用超伝導ソレノイドの設計とクエンチ時の保護動作について報告した。クエンチ解析の結果、設計
に問題ないことが確認された。
3C-a04:川井(KEK)は、副題:冷却システムの設計で、トリスタン/KEKB加速器で使用していたヘリウム冷凍機の移設・改造について報告した。QCSの熱負荷を
評価した結果、2基のヘリウム冷凍機を使用する。建設が進められている。
3C-a05:岩崎(KEK)は、副題:モニター・インターロックシステムで、ネットワーク
を利用したモニタリング・インターロックシステムについて報告した。システム構成や機能について説明された。
続いて3C-a06:菅野(KEK)は、LHC高輝度アップグレード用超伝導磁石の開発(4)-テストコイルの製作-について報告した。ビスマレイミドトリアジン樹脂とS2
ガラスから成る耐放射線性GFRP及び耐放射線性のシアネートエステル樹脂を使用したテストコイル製作を行い、製作方法の妥当性や課題などについて確認を行った。


Y系通電特性 3C-a07-09 座長 土井 俊哉

本セッションでは、REBCOコート線材の通電特性に関して3件の発表があり、活発な議論がなされた。
3C-a07:小野寺ら(九大、ISTEC)は、パーコレーション転移モデルに基づいた解析により、BaHfO3人工ピンを導入したGdBCOコート線材について、
幅広い領域でE-J特性を記述できることを示し、また、M-t特性を推定できることを報告した。
3C-a08:木須ら(九大、超電導工研)は、長尺REBCO線材の局所的なIc分布を測定し、その統計的な解析結果を報告した。一定区間内の平均Ic
区間長に依存しないが、観測される最小Ic(微小区間での)は観測する線材長に依存し、線材長が長くなるほど見かけ上の最小Ic値が小さくなること
を示した。また、Ic値の確率密度関数の形より、Icの低下は確率的にランダムに生じるのではなく、空間的な相関を有していることを報告した。
3C-a09:宇佐美ら(九大、SRL)は、IBAD-MgO基板上にBHOナノロッド、或いはナノパーティクルを導入したGdBCO線材の歪効果について報告した。


構造材料 3C-p10-11 座長 熊谷 進

3C-a10:田村(NIFS) ヘリカル型核融合炉のFFHR-d1の概念設計において、ダイバータの冷却効率を上げるためのダイバータ設置位置の検討を行い、コイル容器と
構造体を接続しているアーム構造部の一部を切り欠くことでヘリカルコイルの裏側にダイバータを設置できることを提案している。この提案により照射損傷の
観点から10倍の寿命が見込まれることを示しており、マルチスケール有限要素法による構造解析の結果から、最も高い応力が生じる場所においてもSUS316LNの
許容応力以下となっていることを示し、構造上問題がない提案であることが議論された。
3C-a11:高橋(阪大) ITERにおける高速中性子に耐え得る絶縁材料の開発を目的として、ガラスクロスとポリイミドフィルムのハイブリッド有機高分子材料を
対象に層間せん断強さに及ぼす樹脂-ポリイミドフィルム界面の照射損傷の影響について報告している。 層間せん断強さの評価および破面観察の結果、樹脂-
ポリイミド界面は、10 MGyまでのγ線では劣化せず、ITERの絶縁材料として十分な層間せん断強さを有していることを明らかにしており、目違い切り欠き試験片
における照射損傷の分布などに対して活発に議論があった。


11月7日(金)
D会場 9:00-12:15

流動特性/熱伝達 3D-a01-06 座長 仲井 浩孝

3D-a01: 太田(東北大)は、コルゲート管内における液体窒素気液二相圧力損失に関する発表を行った。コルゲート管の撓みが流動特性に影響を及ぼして
いないかなどの議論があった。
3D-a02: 黒瀬(東北大)は、水平に置かれた正三角形管内を流れるスラッシュ窒素の圧力損失の特性を円管の場合と比較して議論した。角の部分の流動
特性が円管の場合と異なる原因ではないかとの考察があった。流れに固相と液相の不均一はない。
3D-a03: 高田(核融合研)は、微小重力下での超流動ヘリウムの沸騰に伴う気泡の収縮を可視化することにより、超流動ヘリウムとその蒸気の界面を通る
熱輸送について研究を行った。界面が時間と共に縮小するため、関係する物理量の時間変化をどのように評価するかの議論があった。
3D-a04: 梅津(京大)は、水素流路中心の垂直発熱線における飽和沸騰DNB熱流束を表す式を実験的に求め、円筒ヒーターの場合とほぼ同様の式で表される
ことが分かった。サブクール沸騰の場合や、表示式の係数や定数が何に依存するか、今後の研究で明らかにされるであろう。
3D-a05: 達本(原子力機構)は、強制対流下におけるサブクール液体窒素の過渡熱伝達特性を窒素の場合と比較して考察を行った。水素では、窒素のような
膜沸騰への直接遷移は見られなかった。窒素の膜沸騰への直接遷移は、核沸騰が同時に生じるためだと考えられる。
3D-a06: 堀江(京大)は、液体水素流路内の円柱発熱体における超臨界圧下での強制対流熱伝達を調べ、3D-a04の表示式と良く一致することを確認した。
温度上昇が大きくなると表示式よりも実験結果が大きくなるが、これは境界層の発達に伴うものであるとの説明があった。


A15線材 3D-a07-12 座長 宮崎 隆好

本セッションではNb3Sn関連4件と、Nb3Al関連2件の計6件の発表があった。
長村(応用科研)らはNb3Snの歪依存性を計測するホルダーによるデータのばらつきを、中性子を用いたNb3Snに生起する歪の解析から明らかに
しようとした。
木村(東北大)らは、CuNb合金補強のNb3Sn線材におよぼす熱処理後の曲げ歪の影響を、コイルの巻径を変えて評価することで明らかにした。
渡辺(東北大)らはCIC導体内の素線に生じるキンクの原因を、素線間の循環電流を仮定することで説明できるとした。
川嶋(神鋼)らは、Nb3Sn線材のDT法線材により、ブロンズ法線材より約70%臨界電流密度を向上させた線材を実用規模で試作できたことを報告した。
伴野(物材機構)らは、Nb3Al線材においてバリア材を従来のTaからAgに置き換えることで加工性を改善したことを報告した。また、伴野(物材機構)
らは高角度環状暗視野(HAADF)-STEMにより、Nb3Alのピンニング中心候補である原子レベルでの格子欠陥の観察に成功したことを報告した。